しかし、2006年、アメリカの空爆によってザルカウィはあっさりと死んでしまう。ザルカウィを失った「イラクのアルカイダ」は活動停止を余儀なくされたが、後継者として現れたのがアル・バグダディだった。
バグダディのもとで再度結集したIS
バグダディはもともとイラクの神学者である。しかし、経歴には謎が多く、元バアス党員(旧フセイン政権のアラブ民族主義政党)説や、聖職者説がある。2004年にはアメリカに対する抵抗運動を組織した罪で、米軍の刑務所へ5年間も収容された。皮肉にもそこで現在のISの主要メンバーとの人脈を築いたとされている。
2004年にはかのテロ組織は、バグダディのもとで、再度名称を「イラクのイスラム国(ISI)」と変更。2013年にはシリアとレバノンのアルカイダ系下部組織「ヌスラ戦線」の一部と合流。「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」を名乗る。
ISISはザルカウィが好んだ首切り動画の撮影や、コーランを独自に解釈した過激すぎる規範を民に強要し、各地で残虐行為を繰り返していた。バグダディは組織を巨大化するためにシリアの内戦に干渉していたのだが、アルカイダはこれに反発し絶縁を表明する。
そして、2014年6月、ISは本格的な軍事侵攻を開始。イラクとシリアをまたにかけた戦争を続けている。ISはイスラム教スンニ派の住民や、元フセイン政権の軍人やバアス党員を吸収し、プロパガンダを積極的に行って世界中からテロリストのリクルート活動を行っている。目的は、ザルカウィと同じく領土である。独自の牙城と強力なアーミーを手中にし、国民にイスラム法の遵守を強制し、徴税し、資金をため込んでまた戦争に没頭して領土を拡大すること。そしてバグダッドを中心としたカリフ制国家を再興することである。
戦争はまだ続いている。
この組織がいつ、いかにして滅びるか、まだ見通しは立っていない。
世界の混乱はまだまだ続きそうだ。東京オリンピックは大丈夫なのだろうか。