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NSブラックメタルバンドを確定することは案外難しい。
というのも、NSというのはナチ思想・極右思想、民族主義、愛国主義を総称する言葉として便宜的に使用されているだけであるし、バンドマンがどう考えているか、とう思想の話であって音楽にはあんまり関係がない。
しかも、NS思想をヨーロッパにおいて公言することは大層リスクが大きい。それはCDのセールスに大きく影響するからである。
プリミティブブラックメタルの大御所、「DARKTHRONE」は、CDのジャケットに反ユダヤ主義的主張を書いたためにボイコットを受け、謝罪文を掲載した。
このように、本当に極右思想を持っているのに内緒にしているバンドや、本当は政治に興味なんかないのに悪ぶって「ハイルヒトラー」などと言っちゃっているバンドがいると思われるのだが、ここでは一般的に「NSとみなされているバンド」と「どう見てもNSに見えるバンド」を混ぜこぜにして紹介してしまいたい。
あと、思想の話は前回したので、今回は純粋に音楽としての価値について言及したいと思う。思想を抜きにして楽しんでいってほしい(笑)。動画があるものについては一緒に紹介したい。セレクションはワタシの趣味であることを最初にお断りしたい(笑)。
ABSURD
東ドイツ出身のメンバーによる最も古いNSバンドの一つだ。音楽はブラックメタルの中ではかなり特殊で、Oi!パンクをかなり取り入れたスタイルで、ちょっと聞いただけではこれがメタルだとはだれも思わないだろう。
まぁブラックメタルらしいアレコレがこれに全くないというわけではないが、これはパンクである。と言いつつ曲名をみてると、”werewolf’”だの”eternal winter”だの”deep dark forest”だのブラックメタル然としている。歌詞も反キリストっぽいところもある。
サウンドはへっぽこで演奏も大したことしてないし地下くさくて生っぽくて、でも目の前で演奏されてるような異様な迫力を持つサウンドでかなり中毒性高し!興味がある人は聴いてみてね。
と言いつつ、このバンド、最近は勇壮なバイキングメタル風のメロディアスな楽曲をやっている。これはこれでまあまあ良いが、初期のほうが個性的でオススメ。
NOKTURNAL MORTUM
ウクライナはネオナチの産地だって知ってました?
大戦中はドイツとロシアに挟まれてひどい目にあわされたウクライナだが、ナチ親衛隊のウクライナ人傭兵部隊は異常な凶暴性でユダヤ人を殺しまくったと言われている。
だからなのかは知らないが、このバンドはウクライナ万歳の極右思想を持つバンドとして昔から活動している。音楽は荘厳で雄大で、ウクライナの民謡からインスパイアされたと思われる聞きやすいサウンドだが、アートワークや歌詞、曲名などから明らかな極右思想を持っていることがわかる。
初期はDARKTHRONEぽくて音質の悪いプリミティブブラックメタルだが、後期はメロディアスでとても聞きやすいNSブラックメタルである(笑)。
BURZUM
前ページでも紹介したヴァーグ・ヴァイカーネスの独りバンドである。ブラックメタル黎明期より地道に活動しているが、殺人事件とテロ未遂により収監されてからは地味なアンビエントをまたまた地道に作っていた。
2009年に仮釈放されてからは、NS思想と距離を置く姿勢を打ち出したが、単なるポーズだったらしく、結局武器の所持とテロ未遂で再逮捕。証拠不十分で釈放されたが、人種差別を扇動したとしてフランス当局より告発された。
初期は不気味で鬱で邪悪なプリミティブブラックメタルをやっていたが、上記のごとくアンビエントへ寄り道し、仮釈後はまたペイガンブラックをやっていたが、現在は北欧神話に関係すると思われるエレクトロミュージックを細々と制作している。
GRAND BELIAL’S KEY
古くから活動しているUSカルトブラックメタルバンドだ。サウンド的にはハードコアパンクとメタルの融合が感じられ、非常にシンプルながら重くて疾走感があり、カッコいい。
思想的にはどうやら反ユダヤ主義のようだが、音楽をきいていてもよくわからない。
頭空っぽにして聞いていれば、かなりレベルの高い楽曲に手堅い演奏、邪悪で地下臭くて暴力的な雰囲気が楽しめる。個人的にはかなり好きなバンドだ。
ABSURDが好きなら間違いなく楽しめるだろう。一緒にスプリットを作ったりもしているので、仲が良い?のかもしれない。
GRAVELAND
ポーランドに古くから存在するNSブラックメタルバンドだ。思想的にはNSなのかもしれないが、サウンドを聞いている限りでは思想云々はよくわからない。どちらかと言えば、ペイガンブラックに近い世界観かも?バンドのフロントマンも「ペイガンブラックではあるが、NSではない」と言っているそうである。でも政治思想は極右らしい(笑)。よくわからないのでとりあえず聞いてみよう。
音質最悪でメロディアスでもないし、非常にとっつきにくいサウンドだが、DARKTHRONEの2ndが好きな人にはアピールするのではないだろうか?とりあえず有名なバンドなので聞いてみるよろし。
WOLFNACHT
ギリシャにもとてもネオナチが多いことは有名である。経済が低迷すると白人は極右思想を持つものらしい。ギリシャには「Der Stürmer」という有名なNSブラックメタルバンドもいる。
このバンドは大変わかりやすいNSブラックメタルバンドで、一番最初に聞くのに適しているかもしれない。アートワークもさることながら、サウンド面でもヒトラーの演説をサンプリングに入れたり、インストにドイツ国歌を使用したり、歌詞が「ジーク、ハイル!ジーク、ハイル!」だったりするのでわかりやすい(笑)。歌詞もドイツ語だったりする。ドイツが好きでしょうがないのが伝わってくる(笑)。
馬鹿だなあ、と思いながら聞いてみたら、メタルというよりはパンクのようなサウンドで、とても地下臭くて怪しいのに、妙にテンション高くて楽しげな楽曲である(笑)。初期ABSURDとよく比較される。フォロワーと呼んでも別に構わないのかもしれない。
と言ってもこのバンドは、初期と後期でだいぶ毛色が異なる。初期はパンクっぽいが、後期は勇壮なバイキングメタル風のメロディアスな楽曲である。こういうところもABSURDに影響を受けているのかもしれない。
ARYAN BLOOD
ドイツのNSブラックメタルバンドで、ABSURDに強く影響を受けているのがサウンド面からもまるわかりである。楽曲はなかなかレベルが高く、疾走感のある地下臭いハードコアパンクのようなサウンドながら、リフはなかなかに叙情的でメロディアスである。
バンドメンバーの素性についてはよく知らないが、ナチ思想を持つことで逮捕されてしまう現代ドイツで普通に活動しているとはちょっと考えられない。それぐらい歌詞や曲名は酷い。ナチ思想や白人優越主義や排外主義を隠そうともしていない。バンド名からしてやばいだろう。
まあ、この辺に興味があるなら、とりあえずABSURDを先に聞いてみるのが良いかもしれない。
SATANIC WARMASTER
2014年には日本にもやってきて、ライブをやってくれた大御所バンドである。フィンランドのメタル界隈では大変有名なバンドで、ブラックメタルの新興組の中では最も実力が高いバンドと言われることもしばしば。
私も大抵のCDを持っているし、ライブにも行ったので、このバンドのことは好きである。
来日した際にも少し話題(問題?)になったのだが、バンドのフロントマンは「NS思想は持っていない」とはっきり否定している。これは、もしもNS思想を持っていると認めてしまったら、ライブ自体ボイコットされる可能性があるし、CDの売り上げも激減の憂き目だから、なのかはわからないが、このバンドはどう考えてもアートワーク等はNSっぽい感じである。
まあ、本人が違うというのだから違うのかもしれないが、パッと見た限りではナチとか好きそうだし、NSに見えると言わねばならない(笑)。まあ、悪そうなモチーフにヒトラーやナチスを選んだだけなのかもしれない。界隈でもこのバンドをNSと断言することには否定的な人が多い印象だ。私は、「申し訳ないけどそう見える」という理由でこのバンドをここで紹介してしまうことにする。
NKVD
フランスの正体不明NSブラックメタルバンドだが、バンド名を見る限りではNSというか、ソビエト連邦が好きなのかもしれない(笑)。まあ、私はソ連もナチも似たようなものだと思っているが(笑)。
世の中には、さらにニッチな音楽ジャンルとしてマーシャルインダストリアルという不思議なジャンルの音楽があって、これは戦争やナチやローマ帝国をモチーフにしたおどろおどろしい世界観を、独特のリズムや電子音で装飾したダークウェイブミュージックである。このNKVDというバンドは、マーシャルインダストリアルの手法をブラックメタルに取り込んだ、また不可思議なバンドのようである。
曲自体は非常におどろおどろしく、重厚で、超高速のマシンドラムが落ち着かない気持ちにさせるが、世界観構築という意味では、すごく突出したものを感じるのだ。
KRISTALLNACHT
またまたおフランスのNSブラックメタルバンドで、かなり古くから活動しており、おざなりなフォロワーバンドではないのだが、実力はかなり高い。
サウンドはDARKTHRONEやSATANIC WARMASTERに近くて、メロディアスで疾走感のある曲調。CDの音質は相当悪いが、それがいかにも地下音楽という感じでクールである。
初期はハードコア混じりのシンプルなプリミティブブラックメタルだが、じきにシンセを多用するようになり、地下臭さに荘厳さがミックスされ、これぞブラックメタルという感じに成長していく。
バンド名はナチ時代のドイツで、ホロコーストの狼煙ともいわれる「水晶の夜」事件にちなむ。ゲッベルスや突撃隊に扇動された民衆がユダヤ人に襲いかかり、街中でリンチや略奪が繰り広げられ、数万人が強制収容所へ送られた。
真っ黒な危険思想を持ったバンドなのだろうが、楽曲のレベルがかなり高いのが悲しい。フランスはナチが嫌いなのか好きなのかはっきりしてほしい。歴史を見てもそう思う。
おまけ:INFERNAL NECROMANCY
なんと大日本帝国万歳な極右ブラックメタルバンドである。そんなものもあるのかあ、と思いながらしっかり聞いてほしい(笑)。
ワタシはライブも観たことあるんだが、ヴォーカルのお兄さんはなかなかロングヘア―のセクシーないい匂いのする御仁であった(笑)。
曲はSATANIC WARMASTERにそっくりな感じであるが、国産らしくメロディアスで聞きやすい。
まとめ
芸術とは誠に度し難いものです。
一見素晴らしい作品も、どのような危険思想が根底にあるのかわからないからです。
でもイイものはイイのですよ。
無論、偏狭な人種差別や極右思想には断固反対!諫められるべきものです。
ナチスドイツをはじめとした国家主義、民族主義が一体いかなる悲劇を巻き起こしたかは説明するまでもありません。
既に説明したように「サブカルから危険思想にハマることは起こりうる」のです。
皆様におかれましてはゆめゆめ深淵に引き込まれることがないよう、リテラシーをしっかりと拳に握りしめて、人間の心の闇が産んだこれら暗黒芸術と対峙して頂きたいと思います。グッドラック。