【音楽と極右】NSブラックメタルの起源

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ブラックサバスやヴェノム、スレイヤーといったバンドたちは、初期ブラックメタルの源流として言及されることが多いが、80年代には「バソリー」という、もっと直接ブラックメタルの開祖として語られるスウェーデンのバンドがいる。

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「バソリー」の悪魔崇拝を思わせるアートワーク

彼らの3rdアルバムが最初のブラックメタルとして有名である。それ以降も北欧神話をモチーフに取り込み、後続のバンドに強い影響を与えた。

ブラックメタルの登場

さて、こういったバックグラウンドがある中で、80年代後半のノルウェーで「メイヘム」というバンドが現れ、白塗り化粧「コープスペイント」を施した。こうしてブラックメタルというジャンルの音楽が地下でひっそりと活動を開始したのである。

それまで存在した悪魔崇拝バンドと、ブラックメタルバンドが異なっていたのは、メンバーに「本気の人」が多かったことだ。本気でキリスト教支配体制を打倒してやる、本当の悪魔になってやる、とまで思っていたかは定かではないが、彼らはしばしば教会に放火し、殺人を犯した。そうやってぞくぞく逮捕者が出る中で、もともと悪そうなイメージから人気を博していた音楽だけあって、ファンの間で人気は急上昇してしまった。ファッションで反キリストを叫んでいるよりも、本気で思想を叫んで本気でアブないほうが「音楽も本物だぜ」と勘違いされてしまったのである。

反キリストから多神教=自然崇拝(ペイガニズム)へ

ヴァーグ・ヴァイカーネスというブラックメタルメンバーは、教会放火や殺人事件を引き起こして、ノルウェーでは最高刑の懲役21年を言い渡された。しかし皮肉にもそれがこの男の唯一のアイデンティティーになってしまい、ヴァイカーネスは獄中でブラックメタルの掲げる反キリスト思想を徹底して哲学し、思考し、つきつめ、より万人に受け入れられる形(=政治)に変化させてしまった。また、獄中でその他の極右思想を持つ人間と出会ったと推測されており、強い影響を受けるに至った。

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まず、反キリスト思想は、キリスト教支配体制が確立するずっと前の自国の宗教への憧憬を呼び起こした。それはすなわち多神教であり、バソリ―が掲げた自然崇拝(ペイガニズム)であった。八百万の神々こそ、キリスト教が悪魔と排斥した概念であった。簡単に「悪魔」という言葉を使うのは、キリスト教を崇拝していると公言するに等しい。この矛盾にいち早く気付いたブラックメタルの先駆者たちは、多神教崇拝を前面に押し出した一派を確立する。これは「ヴァイキングメタル」などと呼ばれることもあるが、サウンド的になんら特色もなく、単に「自然崇拝系」(ペイガン)と呼ばれることもある。複雑だ。

ネオナチとの邂逅

しかし、北欧神話や自然崇拝だけで留まっていればよかったのだが、多神教崇拝は国のアイデンティティーや文化の独自性などに容易に結びついてしまうようである。また、白人の優越性の論拠を北欧神話の中の英雄像に求めた国民社会主義政権(ナチス)も、ブラックメタルファンの間で影響力を増して行くことになった。

またその先駆者の代表たるヴァイカーネスは、思想云々を抜きにして「ナチスとかドイツ軍の方がいい武器持ってて見た目も良かったし、規律もあってかっこよかったから」と率直に語っている通り、装備や見た目のイメージが、若者を強く惹きつけたことは否めない。

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